秋海棠といふ名も母に教はりし 石田郷子
(しゅうかいどうというなもははにおそわりし)
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薄紅色の小花を少し垂れ下げて俯くように咲く秋海棠。
緑道や公園の少し日陰になるようなところに咲いていて、
名前は知らなくても見たことがある、と思うような花だ。
秋海棠が咲いているのを見てふと足を止める。
花から思い起こされる母との思い出。母が教えてくれた、たくさんのこと。
そういえば、この花の名前も母に教えてもらったんだっけ。
あれは確か一緒に買物に出た道すがらだったかな。
「この花、秋海棠っていうのよ」 「ふーん」
あの時は何気なく聞いていたけれど、ちゃんと今でも覚えている。
花の名前は母との記憶につながっている。
それは、母が一つ一つ折に触れて教えてくれたから。
それはまるで見えない宝物を残してくれるかのように。
母ここに佇ちしと思ふ龍の玉
この句も同じ作者の句。掲句を思い出すと対のように思い出す句だ。
そしていつも心の奥の方が、じーんと熱くなってくる。