2010年11月 4日

 

秋海棠といふ名も母に教はりし     石田郷子

 

(しゅうかいどうというなもははにおそわりし)

...............................................................................................

薄紅色の小花を少し垂れ下げて俯くように咲く秋海棠。

緑道や公園の少し日陰になるようなところに咲いていて、

名前は知らなくても見たことがある、と思うような花だ。

 

秋海棠が咲いているのを見てふと足を止める。

花から思い起こされる母との思い出。母が教えてくれた、たくさんのこと。

そういえば、この花の名前も母に教えてもらったんだっけ。

あれは確か一緒に買物に出た道すがらだったかな。

「この花、秋海棠っていうのよ」 「ふーん」

あの時は何気なく聞いていたけれど、ちゃんと今でも覚えている。

 

花の名前は母との記憶につながっている。

それは、母が一つ一つ折に触れて教えてくれたから。

それはまるで見えない宝物を残してくれるかのように。

 

母ここに佇ちしと思ふ龍の玉

 

この句も同じ作者の句。掲句を思い出すと対のように思い出す句だ。

そしていつも心の奥の方が、じーんと熱くなってくる。

 

 

 


Yuki Higano's Official Web Site / Copyright © Yuki Higano / All rights reserved.