寂しいと言いわたくしを蔦にせよ 神野紗希
(さびしいといい わたくしを つたにせよ)
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この句を読むと、わたしはいつも宮崎駿のアニメに出てくるような印象的な目をした女の子の
顔を思い出す。例えば「天空の城ラピュタ」のシータや「もののけ姫」のサンの顔。
話の内容は全然違うのだけれど、どこか不器用で、うまく思いを伝えることが出来なくて、
でも大切な人を守りたい、というようなもどかしさがそう思わせるのかもしれない。
たぶん、大人になりきってしまったらこうは言えない。
「蔦にせよ」と作者は呼びかけているけれど、それは心の中の声。
「寂しい」と言ってくれれば、私はあなたを守ってあげることが出来るのに。
それでも「蔦」の一語は切なく響く。
切なく思うのは、たぶん大人になりきってしまったから。