ひかり飛ぶものあまたゐて末枯るる 水原秋桜子
(ひかりとぶものあまたいて うらがるる)
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「末枯れ」は晩秋になって草木が葉先や枝先から枯れ始めることをいう。
「末(うら)」とは端とか末という意味で、草木の先端のことを指しているのだが、
何かこの「うら」という響き自体に、すでに秋の終りの物淋しさを感じてしまうのは、
「心淋しい(うらさびしい)」という音の響きをそこに重ねてしまうからだろうか。
鳥の渡りや草木の枯れに見る季節の移り変わりに、人々は古来より心を動かされてきた。
ひかり飛ぶものとは秋になって山から降りてきた小鳥たちや渡りの鳥たちの姿だろう。
「ひかり」と「枯れ」。対比するかのように置かれている言葉に実はどちらのいのちの
かがやきをも詠みとめられていることに気づく。
草木にとって枯れることは冬を迎えるための準備。そこにも見えない力が光っている。