梨食うてすつぱき芯にいたりけり 辻 桃子
(なしくうて すっぱきしんに いたりけり)
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梨をまるごと齧るということはあまりないけれど、「すっぱき芯」の味には覚えがある。
この句は皮をくるりと剥いてそのまま齧って食べたのだ。
そして最後にすっぱい芯にいきあたった。
梨という果実を余すことなくこの句は言い得ていて、妙に納得してしまう。
梨というとその甘さや瑞々しさに重きを置かれた詠み方がされるが、そういう一切の
概念を排した対象の捉え方が実に新鮮。
「すつぱき芯」は文字通りの芯でもいいが、心理的な酸っぱさと捉えてみても
それはそれで面白い。