数へ日の欠かしもならず義理ひとつ 富安風生
(かぞえびの かかしもならず ぎりひとつ)
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特別に世話になった人なのだろう。年の瀬の慌しさの中、他のことは不義理を
しても、そのことだけは欠かすことなく続けている義理。
具体的なことは何も言ってはいないけれど、「義理ひとつ」には
世話になった方が亡くなったあとも、その奥様への歳暮のご挨拶は欠かさずに
伺う、というような義理を想像させる。それは日本人の心からだんだんと薄れて
いきつつある義理ではないか。それほどに「ひとつ」の一語は、作者の特別な
思いを感じさせるのである。