生きるの大好き冬のはじめが春に似て 池田澄子
(いきるのだいすき ふゆのはじめが はるににて)
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小春日和も今日あたりまでで、
来週からは天気も崩れて冷え込みが厳しくなるらしい。
この句も小春日和を詠んだ句だ。
冬のはじめの暖かさを、そのまま素直に言っている。
「生きるの大好き」も「冬のはじめが春に似て」も表現は子供みたいに
素直で無邪気な感じがするけれど、なんだかこの句は深いなあと思う。
子供でもなく、若者でもなく、ある程度人生を経験した人でないと
たぶんこの季節は選べない。
春の穏やかさでなく、夏の力強さでなく、秋の爽やかさでもなく、
ましてや冬の厳しさでもなく、冬に入りたての微笑むような陽気に
出会えた思いもかけぬうれしさ。
もちろん、小春の浮き立った気分が「生きるの大好き」と素直に言わせた
句と鑑賞してもいいのだけれど、冬のはじめが春に似ていると言った作者の
言葉の中に、どこか人生の面白さみたいなものを感じさせてくれるのである。
そしてその面白さが「生きるの大好き」という思いを輝かせているように思う。