2010年11月11日

 

小春日やりんりんとなる耳環欲し   黒田杏子

 

(こはるびや りんりんとなる みみわほし)

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立冬を過ぎて、穏やかな晴れの日が続いている。

「小春日」は冬の初めのころの春を思わせる暖かな陽気のことを言う。

ここ数日はまさに小春日だ。

俳句を始めた頃、「小春」という響きが冬の季語であることが新鮮だった。

そして冬の暖かさに「小春」と名づける昔の人の季に対する遊び心を

心憎いと思ったものだ。

「小春」は陰暦十月の異称。ほかに「小六月」とも言う。

陰暦の季節の表わし方は、表現が豊かだなとつくづく思う。

今の暦は分かりやすくて便利だけれど、やはりどこか味気ない。

 

掲句は「小春日」がとてもいい。もちろん「春」ではだめ。

ただ暖かい春では「りんりんと鳴る」が響いてこないからだ。

「りんりんと鳴る耳環欲し」という思いは、やはり小春の中にある

冬という季節と響きあっているのである。

 

 


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