小春日やりんりんとなる耳環欲し 黒田杏子
(こはるびや りんりんとなる みみわほし)
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立冬を過ぎて、穏やかな晴れの日が続いている。
「小春日」は冬の初めのころの春を思わせる暖かな陽気のことを言う。
ここ数日はまさに小春日だ。
俳句を始めた頃、「小春」という響きが冬の季語であることが新鮮だった。
そして冬の暖かさに「小春」と名づける昔の人の季に対する遊び心を
心憎いと思ったものだ。
「小春」は陰暦十月の異称。ほかに「小六月」とも言う。
陰暦の季節の表わし方は、表現が豊かだなとつくづく思う。
今の暦は分かりやすくて便利だけれど、やはりどこか味気ない。
掲句は「小春日」がとてもいい。もちろん「春」ではだめ。
ただ暖かい春では「りんりんと鳴る」が響いてこないからだ。
「りんりんと鳴る耳環欲し」という思いは、やはり小春の中にある
冬という季節と響きあっているのである。