日のくれと子供が言ひて秋の暮 高濱虚子
(ひのくれと こともがいいて あきのくれ)
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「日のくれ」と子供のいった声に、日の暮に気付き、そこに秋の暮を感じている。
「秋の暮」は今では文字通り秋の夕暮れの意味でつかわれることが多いが、
もともとは秋の終わり、晩秋をさすものでもあった。
晩秋をさす「暮の秋」という季語があるので、それと区別して使われてもいるが、
「秋の暮」に晩秋の雰囲気をまとっている句も多く、そのあたりははっきりと区別する
ことはむずかしい。
この句の秋の暮は、秋の暮方と秋の終わり(晩秋)のどちらの情趣も伴っている。
それゆえ、何ともいえぬしみじみとした味わいがあるのである。