2010年10月 9日

 

秋冷やモローの白き一角獣    天野小石

   

(しゅうれいや  もろーのしろき  いっかくじゅう)

 

ひんやりと身につのり来る大気とモローの描く一角獣。

画家ギュスターヴ・モローは聖書や神話を題材に精神性高い

美しい絵を描いた。

 

――手に触れるものも、目に見えるものも信じない。

目に見えないもの、ただ感じているものだけを信じている――

                            ギュスターヴ・モロー

 

モローの言葉はその描かれた作品の数々を見れば、とてもよく分かる。

 

パリのクリュニー中世美術館に有名な一角獣のタペストリーがある。

モローの一角獣はそのタペストリーに触発されて描かれたという。

六枚のタペストリーすべての織りに暗示的な意味がたくされていて、

その美しさは見るものを魅了するが、タペストリーの一角獣はモローのそれと

比べると思いのほか可愛いらしい。

 

モローの一角獣はモローのものとして凛と幻想的な魅力を放っている。

秋冷がひたと寄り来るように、見ているうちにふっと心の中にまで入ってくるようだ。

 

一角獣 モロー.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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