帰るのはそこ晩秋の大きな木 坪内稔典
(かえるのはそこ ばんしゅうの おおきなき)
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関西では木枯し一号が吹き、北海道では初雪と一気に冬の装い。
今年の秋は駆け抜けるように過ぎていきそうです。
「~年以来の」という真夏日や早い冠雪の気象ニュースが自然の警告のようにも
聞こえます。人がいなくなって、ふたたび地球が緑に覆われて新たに再生してゆく
そんな時が来るのもそう遠い未来ではないのかもしれません。
人は地球を消耗させすぎましたから。
今は晩秋。行く秋を惜しんで、冬の訪れを身に感じる季節。
帰るのはそこ、というのはずーっと同じ場所で帰りを待っていてくれたかのような大きな木。
「晩秋」がとても心に響いてくるのは、人生の季節をその言葉に重ねるからだろう。
晩秋の大きな木。そこには羽をたたむ大きなやすらぎだけがある。
だからこそ、そこに帰ってゆこうとするのだ。
晩秋の大きな木。このゆるぎない存在を、誰もが持っているのだろうか。