夢殿の夢の天まで澄みにけり 林 誠司
(ゆめどのの ゆめのてんまで すみにけり)
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夢殿は法隆寺東院の本堂。行信僧都が聖徳太子の遺徳を偲び天平11年(739年)に
斑鳩宮跡に建てた八角円堂で中の厨子には聖徳太子等身と伝えられる秘仏救世観音
がおさめられている。
飛鳥時代、そのあたりは聖徳太子の寝殿があって、その傍に建てられた堂は聖徳太子
が経典を写したり、幾日も籠って瞑想をしたりと、禅定して夢に入られる聖なる場所で
あったという。
そこは聖徳太子が世をよくするためにどうしたらいいかを考え、よりよい世界を作る夢を
見る場所であったのだ。当時の夢殿は焼失してしまったが、聖徳太子の等身を本尊と
する夢殿には聖徳太子の夢がいまでも息づいているように思う。
夢殿とは聖徳太子の夢そのもの。その夢の天まで澄んでいるというところに、
悠久の時を超えてその夢に思いを馳せる作者のロマンがある。