羽音もう聞こえぬ高み風邪心地 髙柳克弘
(はおともう きこえぬたかみ かぜごこち)
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風邪心地というよりも、よくなったかと思うとまたぶり返す風邪に
困っていますが、風邪を引くといつも思い出す一句。
風邪の引き始めのだんだんと五感が遠のいていく感じと
薄れゆく羽音がよく響き合っているところがいい。
もっといいと思うところは「高み」としたところ。ここが巧い。
それによって、しっかりと映像として大空を羽ばたいてゆく
鳥の姿が見えてくる。聴覚のみでは鳥の姿が見えてこない。
「高み」という浮遊感覚も風邪心地の季語をより魅力的に生かしている。
空を見上げ、遠ざかりゆく鳥の姿を目で追いながら、どこか自分だけが
取り残されてしまったような気分。風邪心地にはそんな淋しささえも滲む。