柚子風呂に妻をりて音小止みなし 飴山 實
(ゆずぶろに つまおりておとこやみなし)
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明日は冬至。二十四節気の一つで、昼の時間が一年で最も短い。
冬至の日には、無病息災を願って冬至南瓜を食べたり、柚子湯に入る。
湯舟に浮かぶ柚子の明るい黄色と湯気とともに立ち上がる清々しい香。
湯舟に浸かるだけで不思議と身が改まる心地がするものだ。
柚子湯というと、その香や色彩が詠まれがちだが、掲句は「小止みなし」
と音に注目して詠まれているところがいい。
少し長いお風呂で心配をしたのかもしれない。耳を澄ますとちゃぷちゃぷと
いう音が風呂場から聞こえてくる。その音は、柚子を動かしては香りを楽し
んでいる妻の姿を想像させる。「音小止みなし」にはその音を聞きながら
安堵している作者の姿が見えてくる。
そしてそんな妻の姿を愛おしく思うやさしい気持ちが同時に感じられるのである。