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2010年11月 5日

 

ころがつて帽子の箱や冬支度    石田勝彦

 

(ころがつて ぼうしのはこや ふゆじたく)

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もうすぐ冬がやってくる。

本格的に寒くなる前に装いも冬の準備をする頃。

マフラーや手袋、厚手のコートに冬帽子。

帽子はたいてい箱に入れて高いところに積んでしまって置くことが多い。

それを降ろして取り出している感じが「ころがつて帽子の箱や」に

うまく出ていて、思わず納得してしまう。

季節のものを入れ替えるときの、あたりが少し物で散らかる感じも

同時に見えてくるようだ。

 

 

 

 

2010年11月 3日

 

食卓にレモンと鰯文化の日    山田みづえ

 

(しょくたくに れもんといわし ぶんかのひ)

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今日は文化の日。

その名に相応しいひらけるような青天で、この日に尽くしてくれているかのようです。

叙勲のお祝いが皇居でひらかれ、街では学校の文化祭が行なわれたり、

華やかさを感じる祝日でもあります。

掲句は祝日で休みとなった日の食卓。

レモンと鰯。鰯はどんな風に料理されたものでしょう。ただ焼いただけかもしれません

が、何となくそれよりちょっと手をかけてムニエルぐらいにしている、そんな食卓を

想像します。鰯はあまり凝った料理でもいけません。あくまでも庶民的な鰯の域が

いいのです。この句のポイントは「レモン」ですね。

鰯にレモンを添えたところに、常とは違うちょっとした気持の彩りを感じさせます。

お皿の上のレモンと鰯。レモンの黄色が秋の爽やかなひかりとも引き合います。

なんだか文化の日の食卓としてこれ以上のものはないような気がしてきました。

 

秋も最後の祝日。いただいた青空に存分に秋を惜しみたいと思います。

 

 

 

2010年10月22日

 

栗飯のまつたき栗にめぐりあふ   日野草城

 

(くりめしの まったきくりに めぐりあう)

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栗の美味しい季節になった。

栗を使ったスイーツもたくさん出回っていて魅力的だけれど、

栗そのものの美味しさを味わえる栗飯がやっぱり一番贅沢だ。

ほくほくした栗の食感とやさしい甘味。家庭の秋の味。

季節の贈り物をいただく、という心の贅沢でもある。

 

「まつたき栗」とは完全な姿の栗。つまり、形が崩れていない栗のこと。

日常のささやかな贅沢に発見した、これまたささやかな贅沢。

ごろんと入っていた大きな栗に子供のように喜ぶ顔が見えるようだ。

 

 

2010年10月11日

 

歯を磨く東京の朝体育の日   竹岡佐緒理

 

(はをみがく とうきょうのあさ たいいくのひ)

 

今日は国民の祝日、体育の日。

東京オリンピックの開会式の日を記念して作られた祝日で

2000年から10月の第二月曜日となった。

連休を作るための改定だが、体育の日は10月10日と覚えているので、

一日ずれると、こころなしか変な感じがする。

 

この句は「東京の朝」がとてもいい。

つまり、日頃の生活圏は東京ではないということだ。

東京に住んでいたら当たり前で、こんな風には詠まない。

久し振りに上京して迎えた朝。

歯を磨くという日常の事柄から、日常とは違う一日のはじまりを巧みに

描いている。体育の日という健康的な響きもまた理屈なくいい。

 

作者は早大俳研の後輩。俳句甲子園で活躍して、在学中は俳研の幹事長も務めていた。

今は帰郷して仕事に就いているという。昨日のため(?)に久々に上京してきてくれた。

 

 


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