何求めて冬帽行くや切通し 角川源義
(なにとめて ふゆぼうゆくや きりとおし)
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「切通し」とは、山や丘などを切り開いて、交通が出来るようにした道。
鎌倉の山を歩いていると、掘削のあとの岩肌がむき出しになっている
切通しに出合う。まわりの木々に日を遮られてどことなく暗くて、
一人で通るのはちょっと躊躇われるようなところもある。
その切通しをひとり行く人がいる。
何のためにこんなところを抜けていくのだろうか。
「冬帽」に象徴された人物の孤独を感じる句だ。
切通しを抜ける冷たい風をも感じる。
「何求めて冬帽行くや」と作者は言うけれど、作者もまた同じなのである。
作者自身の人知れぬ孤独がそう言わせたのであろう。