神垣や奥拝まるる冬桜 野村喜舟
(かみがきや おくおがまるる ふゆざくら)
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神垣とは神社の周囲の垣のことで、神域を他と区別するためのもの。
仏像やキリスト像を拝むのとは異なり、神社のご神体は直接見て拝む
ことが出来ない。ご神体は目に触れぬところにあって、
そこに向かって人は拝む。
この句を読んで、わたしは伊勢神宮の内宮の光景が浮かんだ。
天照大神のいる神様の領域は高い塀が四方を巡っていて
見ることが出来ないが、皆、その見えない奥へ向かってしずかに目を閉じている。
その奥にいらっしゃるという神様の息吹を感じようとしているがごとくに。
冬桜は冬に咲く白色一重の小振りの桜。
最後に置かれた「冬桜」に、拝む人のこころのありようが見えてくるように思う。