完璧なまでの省略大冬木 日下野仁美
(かんぺきなまでのしょうりゃく おおふゆき)
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好きな季節があるように、季語にも好みの季語というものがある。
私にとって「冬木」は気に入りの季語のひとつ。
「ふゆき」と口に出すだけで、言葉に宿っている詩が立ち現れて
くるようなところが好きだ。
葉を落として枝ばかりになった大樹。
そのシンプルな立ち姿を「省略」と捉えた。
省略というと不完全で中途半端な印象があるが、
冬木の場合はそれが完全形。
しかも「完璧なまでの」と駄目押しのように言ったところが
この句の面白さだ。枝を存分に広げて堂々と立つ
この上なく完璧な冬木の大樹が見えてくる。