2010年11月10日

国宝 源氏物語絵巻

御法(部分) .jpg

 

 

 

 

 

 

 

源氏物語絵巻「御法」部分(葉書より)

 

御法 復元.jpg

 

 

 

 

 

 

 

源氏物語絵巻「御法」復元(葉書より)

 

 

五島美術館で開催している「国宝 源氏物語絵巻」を見てきました。

図録などでは幾度か見たことがありましたが、実物をしっかり見るのは

おそらく初めて。しかも今回は五島美術館が所蔵しているもの以外に

愛知の徳川美術館所蔵の絵巻とあわせて現存している絵巻の大方が

一同に見られるというのも魅力で、前から楽しみにしていたのです。

 

源氏物語絵巻は平安時代の12世紀、『源氏物語』成立から約150年後に

描かれた日本最古の絵巻物です。各帖から印象的な場面の本文を書写し

た「詞書」(ことばがき)とその場面が描かれた絵が交互に繰り返され、

今でいうと物語のダイジェスト版みたいなものですが、

その書写された「かな文字」の美しさや、「やまと絵」のかもし出す典雅な

雰囲気はただものではない空気を纏っていました。

 

今回の注目は、当時の色彩を科学的分析に基づいて再現した

「平成復元模写」が同時に展示されていること。

消えていた花の姿や、装束の色が鮮やかに蘇っていて、想像以上に

明るい色彩に驚きました。ほんとにただただ美しいという感じ。

この「源氏物語絵巻」に限らず、仏像にしても五重塔のような建造物にしても

元々の色彩が再現されると、いつもたじろぐような驚きを感じます。

十二神将も驚くような赤や緑の原色でしたし、奈良の大仏は金箔で金色

でしたし、後世の人たちが今の色の剥落した姿を愛でて拝んでいるなんて、

当時の人はきっと考えられないでしょうね。

 

でも実のところ、剥落した今の状態の方がわたしは見ていて安らぎます。

なぜかその方が心から美しいと思える。不思議ですね。

 

写真は第四十帖「御法」(みのり)。

絵巻の人物は紫の上と光源氏です。大学時代、源氏物語の演習でこの段を

担当したのを思い出して懐かしくなりました。

病の紫の上を光源氏が見舞い、明石中宮とともに、萩につく露に

はかない紫の上の命をたとえて、和歌を詠むところです。

 

おくと見るほどぞはかなき ともすれば風に乱るる萩のうは露      紫の上

ややもせば消えをあらそふ露の世におくれ先だつほど経ずもがな   光源氏

 

光源氏の思いが切ないです。

絵巻には、和歌を詠み交す二人の傍らに、風に揺れる萩が描かれていました。

 

 

 

 

 

 


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