かの鷹に風と名づけて飼ひ殺す 正木ゆう子
(かのたかに かぜとなづけて かいころす)
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鷹は冬の鳥。この句も昨日の句と同じ、自由を奪われた鳥の姿を詠んでいる。
「かの鷹に」というこの出だしが好きだ。
「かの」は漢字では「彼の」と書いて「あの」という言い方と同義だが、
「あの」には具体的な距離をそこに感じるのと比べて「かの」という言い方
には、対象の存在がそこに在って無いように感じるからだ。
「かの鷹」は作者の心に浮ぶ鷹の姿であって、また不特定の鷹をも指している。
大空を我がもの顔に悠々と飛びまわってこそ鷹は鷹として生きられる。
自由を失った鷹はもはや鷹ではないのだ。
この句はその生の憐れさを、「風」という名でばさりと切って言い放っている。