檻の鷲さびしくなれば羽搏つかも 石田波郷
(おりのわし さびしくなれば はうつかも)
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檻の中で飼われている鷲。
波郷が「鶴」を創刊するときに詠んだ「吹きおこる秋風鶴を歩ましむ」も
動物園で作った句だというから、これも動物園の鷲かもしれない。
檻の中の止まり木にじっと動かずにいる鷲の姿を見たことがあるが、
それは何者をも寄せ付けぬような孤高の美しさであった。
とは言え、猛禽類である鷲が、せまい檻の中でじっとしている姿は
やはり哀れを誘う。
檻の鷲をじっと見つめる作者の目は鷲の孤独と向きあっているのだろう。
「さびしくなれば」と鷲に寄り添う心が切ない。