秋晴のゆるむことなき一日かな 深見けん二
(あきばれの ゆるむことなき ひとひかな)
雲一つない秋晴の空。青く澄んで高くどこまでも広がる空。
秋の空は変わりやすいので、晴れていてもこの句のような
澄み渡った空に出会えることは少ない。
それにしても「ゆるむことなき」とは上手い表現だ。
秋晴そのものを詠みながら、一句全体に清澄な緊張感を湛えている。
「一日かな」はそんな秋空と出会えた感動の喜び。
雲一つない秋晴の空に出会えると、かならずこの句をくちずさむ。
そうすると空と心が通じたように思えるから不思議だ。
昔からそうだったけれど、詩歌の力はすごいと思う。
普通に話しても通じないものを、うたを詠うことによって、
閉ざされた扉が開かれる。それは現世に限らず、
神も人間も森羅万象すべてのものに対して。
俳句を詠む、とは詠う(うたう)こと。
今改めて書く句ではなく、詠う句でありたいと思う。