2010年10月19日

 

秋晴のゆるむことなき一日かな   深見けん二

 

(あきばれの ゆるむことなき ひとひかな)

 

雲一つない秋晴の空。青く澄んで高くどこまでも広がる空。

秋の空は変わりやすいので、晴れていてもこの句のような

澄み渡った空に出会えることは少ない。

それにしても「ゆるむことなき」とは上手い表現だ。

秋晴そのものを詠みながら、一句全体に清澄な緊張感を湛えている。

「一日かな」はそんな秋空と出会えた感動の喜び。

 

雲一つない秋晴の空に出会えると、かならずこの句をくちずさむ。

そうすると空と心が通じたように思えるから不思議だ。

昔からそうだったけれど、詩歌の力はすごいと思う。

普通に話しても通じないものを、うたを詠うことによって、

閉ざされた扉が開かれる。それは現世に限らず、

神も人間も森羅万象すべてのものに対して。

 

俳句を詠む、とは詠う(うたう)こと。

今改めて書く句ではなく、詠う句でありたいと思う。

 

 


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