2010年12月26日

 

寒禽の強く短く枝渡る   山田節子

 

(かんきんの つよくみじかく えだわたる)

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冬の清澄な大気を切るように、俊敏に動く冬の鳥。

冬はその寒さゆえか、野性に生きるものたちの命が

より一層輝いているように見える。

枝を渡りゆく姿にさえも心を奪われてしまうのは、

そこに光るものを感じたからだろう。

その光とは生きる強さといってもいい。

「強く短く」には寒禽の命そのものが詠みとめられている。

 

作者は「海」の大先輩。私が入会した頃に同人会長をされていたが、

間もなくして病に倒れ世を去られた。若輩ものの私をいつも優しく迎え入れて

くださったその穏やかなお顔が今でも浮んでくるが、俳句が大好きで、あとあと

聞いた話では、「俳句の鬼」と言われていたという。

一度も句座をともにしないうちに逝かれてしまったことが残念だ。

「俳句の鬼」。そんな風に言われる人はいくらも居ないだろう。

惜しい人を亡くしたものだと、今しみじみと思う。

 

 

 

 


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