かいつぶりさびしくなればくぐりけり 日野草城
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かいつぶりは鴨よりも小さな水鳥で、水面にもぐって小魚や蝦をとる。
湖や公園の池を眺めていると、ぱっと潜っては少し離れたところから
ぴょこんと顔を出すかいつぶりの愛らしい姿を見ることができる。
どこか得意気にも見えるその姿を、作者は「さびしくなればくぐりけり」という。
さびしさに耐えかねて潜る。まるで一人遊びをしているように。
夕暮れ時の人もまばらになった静かな湖の景が浮んでくる。
一句の思いは、かいつぶりに託された作者自身の心境だろう。
水面に潜るというかいつぶりの行為に、自分の中でしか解消しえない、
作者自身の心の内の寂しさが重なる。