冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋桜子
(ふゆぎくの まとうはおのが ひかりのみ)
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菊の花盛りは秋だが、冬になっても咲いているものを冬菊という。
秋のまばゆい光の中で輝きあうように咲いていた菊の姿とは違い、
枯れを深める景色の中で一つ、一つ静かに咲いている菊。
それも、小振りの菊の姿が見えてくる。
冬菊だけでなく、冬薔薇や冬菫、冬桜など「冬」を冠せられた花々はみな、
寒空の下で自らの力を頼りに咲いているように思える。
「ひかり」とはその自らの力をいっているのだろう。
輝くいのちの光。そこには静かな力がある。
けれども、「まとふはおのがひかりのみ」は他のどの花でもなく、
冬菊であるのがいい。
冬菊にある清浄な空気が、ひかりの質を儚さだけでない崇高なもの
へと導いているように思えるからだ。
冬菊の纏うひかりには、侵しがたい美しさが宿っているように思う。