2010年12月 7日

 

冬菊のまとふはおのがひかりのみ    水原秋桜子

 

(ふゆぎくの まとうはおのが ひかりのみ)

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菊の花盛りは秋だが、冬になっても咲いているものを冬菊という。

秋のまばゆい光の中で輝きあうように咲いていた菊の姿とは違い、

枯れを深める景色の中で一つ、一つ静かに咲いている菊。

それも、小振りの菊の姿が見えてくる。

冬菊だけでなく、冬薔薇や冬菫、冬桜など「冬」を冠せられた花々はみな、

寒空の下で自らの力を頼りに咲いているように思える。

「ひかり」とはその自らの力をいっているのだろう。

輝くいのちの光。そこには静かな力がある。

けれども、「まとふはおのがひかりのみ」は他のどの花でもなく、

冬菊であるのがいい。

冬菊にある清浄な空気が、ひかりの質を儚さだけでない崇高なもの

へと導いているように思えるからだ。

冬菊の纏うひかりには、侵しがたい美しさが宿っているように思う。

 

 

 


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