冬薔薇石の天使に石の羽 中村草田男
(ふゆそうび いしのてんしに いしのはね)
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薔薇は一季咲きのものと、四季咲きのものがあり、
咲いている姿は一年を通して見ることができる。
俳句で詠むときには「薔薇」といえば夏。
夏は薔薇の盛りで大輪の豪華な花を咲かせるが、
冬でも大きな薔薇は咲くので、秋や冬だからといって
花が小ぶりというわけではない。
ただ、薔薇が纏っている空気が明らかに違う。
冬薔薇は凛とした空気の中で咲く姿。そしてその上に
見えるのはコバルトを流したような冬の青空。
西洋風の庭園だろう。薔薇園に置かれた天使の像。
「石の天使に石の羽」の表現には当たり前なことを
再発見するような新鮮さがある。
確かに石の天使は羽も石。もちろん羽ばたくことはい。
冬薔薇と石の天使。
その出会いは何とも侵しがたい。
薔薇のいのちがふっと石の天使に吹き込まれはしないだろうか。
ふと、そんなことを想像してみたくなる。