小鳥来るここに静かな場所がある 田中裕明
(ことりくる ここにしずかな ばしょがある)
帰ってゆくものがあれば、渡ってくるものがある。
秋の空は鳥たちの移動の空。
本能とはいえ、はるか長い道のりをひたすらに渡り来るその姿を
美しいと思う。途中で命を落すものもきっとあるだろう。
越冬のために北方より日本に渡ってくる小鳥たちが、
秋の訪れを告げる。
この句にあるのは、作者のサンクチュアリ(聖域)。
「ここ」はどこを思い描いてもいい。森の木陰でも、湖畔のベンチでも。
心の中だっていいのだから。
「静かな場所」とは詩が生まれようとする場所なのだと思う。