2010年10月17日

 

眠るとき銀河がみえてゐると思ふ   石田郷子

 

(ねむるとき ぎんががみえて いるとおもう)

 

実際にそういう経験はないけれど、

でも、なんだかこの感じは分かる。

眠る前に見た夜空の景がまなうらに残って

明かりを消した暗闇の中で目を閉じると

銀河がふたたびまなうらに浮かぶ。

屋根の上には空高く銀河が広がっている。

似たような句に

 

眠りても旅の花火の胸にひらく 大野林火

 

という句があって、眠るときの景の余韻というと

この句を思い出すが、林火の句は純粋に花火の

美しさと旅の余韻の高揚が美しく詠まれていて、

すこし趣は異なる。

「銀河」の句はおそらく高揚ではない。

むしろ作者と銀河とのしずかな対話のように感じる。

それは「眠りても」という一回性に対して「眠るとき」に普遍性を

感じるからだろう。

 

銀河は天の川のこと。

秋になるとその輝きも一層目立つようになるので、秋の季語になっている。

伝説では会いたき人と人との間を隔てるという銀河。

作者のなかにもそんな銀河の流れが見えているのかもしれない。

 


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