眠るとき銀河がみえてゐると思ふ 石田郷子
(ねむるとき ぎんががみえて いるとおもう)
実際にそういう経験はないけれど、
でも、なんだかこの感じは分かる。
眠る前に見た夜空の景がまなうらに残って
明かりを消した暗闇の中で目を閉じると
銀河がふたたびまなうらに浮かぶ。
屋根の上には空高く銀河が広がっている。
似たような句に
眠りても旅の花火の胸にひらく 大野林火
という句があって、眠るときの景の余韻というと
この句を思い出すが、林火の句は純粋に花火の
美しさと旅の余韻の高揚が美しく詠まれていて、
すこし趣は異なる。
「銀河」の句はおそらく高揚ではない。
むしろ作者と銀河とのしずかな対話のように感じる。
それは「眠りても」という一回性に対して「眠るとき」に普遍性を
感じるからだろう。
銀河は天の川のこと。
秋になるとその輝きも一層目立つようになるので、秋の季語になっている。
伝説では会いたき人と人との間を隔てるという銀河。
作者のなかにもそんな銀河の流れが見えているのかもしれない。