秋風の馬上つかまるところなし 正木ゆう子
(あきかぜの ばじょうつかまる ところなし)
疾走する馬とともに、風の中に消えゆきそうだ。
秋風に吹かれると、体がふっと軽くなるような心地がするが、
馬上ではことさらそんな感じがすると思う。
視界の高さも広がりも、驚くほど日常とは違う。
風もストレートに感じるだろう。
他のどの季節の風でもこの感覚は味わえない。
秋風だからこそ、「つかまるところなし」という
身の透けてゆくようななんともいえないたよりなさを
感じることができる。
正木さんの句には、実景を詠みながら、どこか別の世界へと
誘ってくれる力がある。
シンプルな言葉をいかに選んでいかに表現するか。
そこに、力の秘密がある。
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