2010年10月 2日

 

秋風の馬上つかまるところなし   正木ゆう子

 

(あきかぜの ばじょうつかまる ところなし)

 

疾走する馬とともに、風の中に消えゆきそうだ。

 

秋風に吹かれると、体がふっと軽くなるような心地がするが、

馬上ではことさらそんな感じがすると思う。

視界の高さも広がりも、驚くほど日常とは違う。

風もストレートに感じるだろう。

 

他のどの季節の風でもこの感覚は味わえない。

秋風だからこそ、「つかまるところなし」という

身の透けてゆくようななんともいえないたよりなさを

感じることができる。

 

正木さんの句には、実景を詠みながら、どこか別の世界へと

誘ってくれる力がある。

シンプルな言葉をいかに選んでいかに表現するか。

 

そこに、力の秘密がある。

 

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