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2010年10月16日

 

まつはりて来る秋蝶をそのままに   由季

 

(まつわりてくる あきちょうを そのままに)

 

 

2010年10月16日

 

秋蝶の驚きやすきつばさかな   原 石鼎

 

(あきちょうの おどろきやすき つばさかな)

 

秋蝶は秋になっても飛んでいる蝶。

秋に飛んでいる蝶は紋白蝶やムラサキシジミなど小ぶりな蝶が多いので、

「つばさ」というと少し大袈裟なようにも思えるが、

そこに作者の捉えた対象の存在の大きさが表現されているのだろう。

秋は空気が澄んでいるので、人も物音に敏感になる。

「驚きやすきつばさかな」にはそんな秋の気配の中を飛んでいる

蝶の姿が鮮明に描かれている。

人影や少しの風にも敏感に反応して飛び立ってゆく蝶。

「驚きやすき」という言葉に、作者の秋蝶に寄り添う心が

見えるようにも思う。

 

 

2010年10月 1日

 

さざなみの果てのみづいろ小鳥来る   由季

 

(さざなみの はてのみずいろ ことりくる)

 

2010年10月 1日

 

小鳥来るここに静かな場所がある   田中裕明

 

(ことりくる ここにしずかな ばしょがある)

 

帰ってゆくものがあれば、渡ってくるものがある。

秋の空は鳥たちの移動の空。

本能とはいえ、はるか長い道のりをひたすらに渡り来るその姿を

美しいと思う。途中で命を落すものもきっとあるだろう。

 

越冬のために北方より日本に渡ってくる小鳥たちが、

秋の訪れを告げる。

この句にあるのは、作者のサンクチュアリ(聖域)。

「ここ」はどこを思い描いてもいい。森の木陰でも、湖畔のベンチでも。

心の中だっていいのだから。

 

 「静かな場所」とは詩が生まれようとする場所なのだと思う。

 

 

 

2010年9月30日

 

草に音立てて雨来る秋燕   深見けん二

 

(くさにおと たててあめくる あきつばめ

 

「秋燕」は帰るべくしてまだ残っている燕のこと。

秋は子育てを終えた燕が南へと帰っていく季節。

日本で越冬する燕もいるが、大方は秋分を過ぎた頃を境に姿が見えなくなる。

まだ空を飛び交っている燕に、折からの雨。

草を打って強く降りくる雨は、まるで燕の旅立ちを促がすかのようだ。

一段と深まる秋に、「寒くなる前に帰るんだよ」と燕を案じているこころを感じる。

 

 


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