2011年4月27日

 

チューリップ喜びだけを持つてゐる     細見綾子

 

並んで風に揺れているチューリップの姿は、春の訪れを喜んで

一斉に歌っているように見える。原色の花々の明るさは目に眩しく輝く。

一点の陰りや憂いもなく、まさに喜びだけを持って咲いているようだ。

チューリップのもつ愛らしい姿が童女の心で詠みとめられている。

 

以前つとめていた出版社の本でこの句を載せたとき、

入力の間違いで、「チューリップ喜びだけを待つてゐる」となって

ゲラが出てきたことがあった。寸前のところで気が付いたのだが、

「待つてゐる」も句として成立するよね、これはこれでまた違った魅力がある。

とみんなであれこれ言っていた編集部でのやりとりを懐かしく思い出す。

たった一字の違い。

「待つてゐる」チューリップは待つ時間の分だけ、少し寂しいかもしれない。

 

 

 

 


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