2011年2月20日

 

氷に上る魚木に登る童かな    鷹羽狩行

 

(ひにのぼるうお きにのぼるわらべかな)

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「氷に上る魚」は「魚氷に上る」(うおひにのぼる)のことで、

七十二候の一つである初春の季語。

春のあたたかな日に湖に張った氷が割れて魚が氷の上に踊り出る、

そんな陽気の頃を表わしている。

二十四節気七十二候は古代中国で考えられた季節を表わす言葉で、

二十四節気(立春、啓蟄、立夏などと呼ぶ方)は古代中国で用いられていた

名称がそのまま現在でも使われているが、七十二候の方は日本に伝わって

から日本の風土に合う表現へと改訂され現在にいたっているそうだ。

ただ、歳時記で季語として使われているものはすべて古代中国の名称のもの。

「魚氷に上る」は日本版も古代中国版も同じ名称だが、例えば啓蟄の第三候

にあたる「鷹化して鳩となる」は日本版では「青虫が羽化して紋白蝶となる」

という風になっているし、雨水の第一候の「獺魚を祭る」も「雨が降って土が湿り

気を含む」という意味のものに変っていて、日本の方がより現実的だ。

古代中国の方が遊び心があって断然面白い。

さて、掲句、その七十二候を用いた句だが、「のぼる」を介して魚と子供を氷と木に

対比させた表現が巧み。ただ、ややもすると言葉遊びのみに陥るきらいがあるが、

そこをうまく避けているのは、季節感をきちんと捉えた情景の描写がなされて

いるからだろう。春の陽気に誘われて、木登りをしている子供たちの姿が

一句からはちゃんと見えてくる。

 

 

 

 


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