2011年2月 2日

 

叱られて目をつぶる猫春隣      久保田万太郎

 

(しかられて めをつぶるねこ はるどなり)

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もうすぐ春がやってくる。

この句の季語は「春隣」。字から見てもわかるように、

春がもう隣(というほど近く)に来ているということ。

「春」という言葉が入っているけれど、季節はまだ冬。

晩冬の季語だ。

同じ頃をあらわす季語に「冬終る」というのがあるが、

季語から受ける印象は大きく違う。

どちらも厳しい冬が終わることに違いはないが、

「春隣」には春の兆しを実際に身に感じている明るさがある。

日の光や空の色、肌に触れてゆく風に春へ移りゆこうとする

季節の変化を感じている心の明るさ。

 

叱られた猫は飼い猫。野良猫では目をつぶる前に逃げていってしまう。

何か悪さをして、ご主人に大声を出されたのだ。

反射的にきゅっと目をつぶる猫。

その姿が何とも愛らしい。

叱ったご主人も、そんな姿を見ながら、「まったくしょうがないな~」

としぶしぶ許してしまうのである。

そんな情景を想像させてくれるのも、春隣という季語ならでは。

この猫は、万太郎の猫なのだろうか。

それにしても、万太郎は季語の付け方が本当に上手い。

 

 

 


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