2010年12月 9日

 

逢へば短日人しれず得ししづけさも    野澤節子

 

(あえばたんじつ ひとしれずえし しずけさも)

.............................................................................................

「もう、結構な時間になりましたか」

「あら、ほんとう、外がすっかり暗く...。まだ時間は早いのに。」

「ほんとうだ、冬の日暮れは早いね。まあ、そろそろ、帰りましょうか」

 

冬の暮れの早さは、人との別れの時間を早くもさせる。

「逢へば短日」には、日の短さによる逢瀬の短さを物足りなく

思う切な心がある。本当はもっと一緒にいて話をしていたいのだ。

逢瀬の短さを惜しみつつ、その一方で感じている「しづけさ」。

この静けさは、逢えたことに感じる心のやすらぎ。

人知れずと言っているけれど、その人は他の誰でもなくその相手のことを

指しているのだろう。要するに一方的な恋心。尊敬する師との逢瀬というような

ことを想像させもする。もっと同じ時間を過したいという思いと、逢えただけで

心が満たされるという思い。二つの思いが葛藤しているようで切なくも胸に響く。

 

かにかくに逢へばやすらぐ花柚の香

 

この句も私の好きな節子の句。

「花柚」は夏。強い思いだけれど、それは少女のようなひたむきな思いで

あることをその香りが感じさせる。「逢へばやすらぐ」。この思いがとても

好きだ。

 

 


Yuki Higano's Official Web Site / Copyright © Yuki Higano / All rights reserved.