2010年10月23日

 

渡り鳥はるかなるとき光りけり    川口重美

 

(わたりどり はるかなるとき ひかりけり)

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越冬のために北方から渡ってくる鳥たち。

一羽ずつではなく、大抵は群れで移動してくるので、秋の空を眺めていると、

遠くでも渡りの鳥たちの姿を見つけることができる。

「はるかなるとき光りけり」

渡り鳥の姿が、尊い光りのように描かれていてとても印象的な句だ。

声に出して読んでみて欲しい。韻律が実に美しく響いてくることがわかる。

作者の言う「はるか」は単純な距離の遠さだけではない。

手にいれることの出来ないものへのこころの距離でもある。

 

目つむれば秋の光は地より湧き

泳ぐ身をさびしくなればうらがへす

妙に深いソファー、時計が止まつてゐる

 

つねにどこかに寂しさを湛えているような重美の句に惹かれる。

渡り鳥の句もそう。

25歳の若さで命を絶った作者。命をつなぎとめるかのように詠まれた一句一句が

読むものに輝きながら立ち上がってくる。

 

 


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